メディカルドクターという生き方 <後編:MDに向く医師、向かない医師>

最終更新日:2017.09.28
メディカルドクターという生き方 <後編:MDに向く医師、向かない医師>

臨床の現場とは全く異なる、製薬会社で働くMD(メディカルドクター)という職種。MDとは、実際どのような仕事をするのだろうか?

前編に引き続きMD歴20年以上の加藤医師、そして製薬会社にメディカルドクターを紹介した実績を数多く持つ、株式会社ヒューマンダイナミックスの堤社長にお聞きした。

 

加藤 淳 医師プロフィール

防衛医大卒。一般外科、大腸肛門外科にて研修後、消化器内視鏡専門医を取得。オーストラリアで医師として働いた後に帰国。1995年にメディカルドクターとしてのキャリアをスタートし、2008年に日本製薬医学会認定医を取得。2016年にジェケイ・メディカルコンサルタント株式会社を設立。

 

株式会社ヒューマンダイナミックス

2000年に医師の製薬会社への転職サポートを開始。製薬企業に勤務した経験があるコンサルタントが丁寧な面談を重ねたうえでマッチングを行う。代表もまた、製薬会社の研究開発部、メディカルアフェアーズ部門などで勤務した経験を持つ。

 

向いているのは外科系の医師や開業志向の「人が好き」な医師

─製薬会社でメディカルドクターとして働く魅力は何でしょうか?

加藤医師(以下加藤) チームで動くダイナミズムだと思います。特に部下を持つようになると、チームワークやマネジメントの大変さと面白さに気づきますね。

臨床医の場合でも、後輩を指導することやチーム医療を行うことはあると思いますが、臨床医と決定的に異なるのは「給与に直結する人事評価をする」ということです。私はメディカルドクターとして働くようになってから、「モチベーションコントロール」が人生の課題になりました。

 

─臨床医の場合、医局の教授や民間病院の院長クラスでないと、なかなか経験しないことですね。

加藤 はい。給与というのは、その人の仕事の対価になりますから、当然モチベーションを大きく左右します。その人をよく見て、きちんとコミュニケーションをとらないといけない。上手くいくときもあれば、すれ違ってしまうこともあります。

しかし、部下のモチベーションを上手く維持してプロジェクトを成功させたときの達成感は、臨床医では味わえない種類のものです。

 

─チーム医療の多い外科系の医師に向いているのでしょうか。

加藤 外科手術はチームでするものですから、外科系の医師はメディカルドクターに向いていると思います。また、“人が好きで、人と関わることが苦にならない”開業志向の医師も向いていると思いますね。

製薬会社で働くメディカルドクターは、「私は専門医なので」という待ちの姿勢でいると仕事になりません。何か問題が起きていないか、チームメンバーとどんどん話をして、問題があれば提案し、一緒に解決していくというリーダーシップが求められます。

特に外資系製薬会社の場合、本国の開発本部やメディカルアフェアーズとの円満な関係構築が欠かせません。そこで、自分のチームの代表として、積極的にアピールすることも重要なリーダーシップです。

英語という国際語をツールとして、メールや電話会議、そして社内のグローバル会議を通じて、本国の信頼を勝ち取っていくことが必要になります。

 

メディカルドクターには、当直もオンコールもない

─当直やオンコールのない勤務に魅力を感じる医師もいるのでは?

堤社長(以下堤) はい。メディカルドクターがその企業の社員として働く場合、勤務形態は他の社員と同じですから、当然ながら当直もオンコールもありません

一方で、医師でなければメディカルドクターにはなれませんから、苦労して取得した医師の資格を活かして働くことができるのも魅力だと思います。

 

─とはいえ、臨床の現場から完全に離れるのは、勇気がいりますね。

堤 製薬会社にとってメディカルドクターの臨床経験は財産なので、メディカルドクターになってからも、週に1回定期非常勤で外来を担当したり、不定期で健診のアルバイトをしたり、というケースはよくあります。

 

加藤 私も専門医の資格を維持するために、定期非常勤で外来を担当していました。製薬会社によって対応は異なりますが、メディカルドクターの兼業を一切禁止している企業の方が少ないのではないでしょうか。

 

─臨床経験が財産になるというのは?

加藤 例えばメディカルアフェアーズという部門では、病院に出向いて新薬の説明をする機会がよくあります。

もちろん自社のMRも同行しますが、「どのくらい投与するのか」、「副作用が出た場合にどのような対応をするのか」など適正使用の議論において、医師でないと具体的に説明できないことも多いため、メディカルドクターの本領が発揮される重要な仕事です。

その場で何よりも大切なのは、“患者さんに接する臨床医の気持ちをイメージするスキル”。これは、自分自身の臨床経験の有無に大きく左右されます。

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向いていないのは、「先生と呼ばれないとダメ」な医師

─メディカルドクターに向かない医師もいると思うのですが…。

加藤 部門によって求められるスキルや適性が違いますから一概には言えませんが、どの部門でも共通する3つの「踏み絵」があります。

ひとつめは、社内で、先生と呼ばれなくても大丈夫かどうかです。

どうしても“先生”と呼ばれないとプライドが許さないという方もいます。そういう医師は、メディカルドクターとして他のスタッフとチームワークを発揮するのが難しいのではないでしょうか。

 

ふたつめの踏み絵は、社外で、先生と呼ばれなくても大丈夫かどうか

部門にもよりますが、仕事で社外の医師に接すると“製薬会社のスタッフ”として見られます。名刺を渡してもしっかり見てくださる先生はほとんどいらっしゃらないので、まずこちらは医師だと思われません。そのときに「私も医師なのに!」と肩書にこだわることなく、製薬会社の一員としてスムースに話をすることが求められます。

 

そして、最後の踏み絵は、自分の専門外の薬の担当になっても大丈夫かどうかです。

製薬会社では様々な薬を作っていますから、必ずしも自分の専門を活かせる薬の担当になるとは限りません。そのときに「この領域のことは知らないし…」と尻込みせずに、柔軟に対応できるかどうかで、メディカルドクターとしてのパフォーマンスが大きく変わってきます。

 

─専門の話が出ましたが、メディカルドクターに求められる経験は何でしょうか?

堤 癌の診断や治療の経験が求められることが多いですね。診療科目でいくと、内科、外科系の医師は、経験を活かしていただきやすいと思います。一方で、眼科、耳鼻科、皮膚科については、正直なところほとんど求人がありません。

 

─今後メディカルドクターは、どのような位置づけになっていくのでしょうか?

堤 以前から外資系の製薬会社では、メディカルドクターの存在が当たり前でした。また海外では、メディカルドクターというのは臨床医に負けず劣らずステイタスのある職種です。今、日本は欧米に遅れをとるまいと製薬に力を入れていますから、今後メディカルドクターはもっとメジャーで社会的地位の高い職種になっていくのではないかと思います。

 

加藤 日本製薬医学会の認定医制度もできて、これから益々需要が増えるとともに専門性が求められるようになる職種だと思います。

 

 

2回にわたって「メディカルドクター」という職種に焦点をあててご紹介しましたが、いかがでしたか?

メディカルドクターの世界は奥が深く、ここでご紹介した話は、ほんのさわりでしかありません。ご興味を持たれた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。

製薬会社でのキャリアに興味をお持ちの方、ご質問がある先生などいらっしゃいましたら、こちらの問い合わせフォームよりお気軽にお問合せください。

 

おまけのメディカルドクター豆知識

 

  • ひとくちに製薬といっても「製薬会社」と「CRO」がある
    • 製薬会社:医薬品の創薬・開発・生産・市場販売までを担う。
    • CRO:Contract Research Organizationの略。製薬会社から開発業務を受託する。

 

  • メディカルドクターが勤めるのは主に3部門

臨床開発部

治験の実施を行う。症例数を集めるにあたっては、協力先の医療機関の医師との調整を行うなど、出張も多い。100名規模の部下を持つこともあり、ダイナミックなリーダーシップを発揮できる。

 

安全性情報部

薬の副作用を評価し、副作用の発生を減らして重篤化させない対策(Risk Management)を行う。3部門の中では、一番出張が少なく、デスクワークが中心。正確性と継続性が求められる。

 

メディカルアフェアーズ

日本の製薬会社内では、ここ5年ほどの間で新設された部門。薬の担当治療領域の疾患について、幅広く深い知識が求められる。KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる、薬のインフルエンサーとなる医師と協議する機会が多く、出張も多い。

 

取材・文 松山あれい

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