【医療経営士コラム】データから見る勤務医の労働時間の実態(2016.05.12)

最終更新日:2018.06.21
【医療経営士コラム】データから見る勤務医の労働時間の実態(2016.05.12)

2016年4月、エムステージは4人の新卒学生が入社しました。
私も新入社員の入社後研修を担当しており、医療業界経験のない新入社員に医療業界や医師の勤務の実態について教えています。

医療業界で仕事をしたことのない新入社員に、医師の勤務の実態を教えると、だいたい驚きます。
その度に、先生方が当たり前に行っている業務内容が、世間的にみると驚嘆されることなのだと再認識させられます。

その実態を証明するようなデータをご紹介します。
2011年に労働政策研究・研修機構が調査した、勤務医の労働時間のデータです。
そのデータによると、勤務医師の1週間の平均労働時間は53.2時間となっています。1週間に60時間以上の労働をしている医師が全体の4割というデータが出ています。

医師の勤務時間出典:労働政策研究・研修機構

先生方はご自身の勤務時間を見返してみて、「そんなもんかなぁ」と思われるかもしれません。しかし、この数字は他の労働者と比べると著しく高い数値です。

厚労省の統計によると、上記データと同時期である2011年1月の一般の労働者の平均労働時間は月間155.5時間でした。1週間の労働時間で考えると、およそ38時間程度。つまり勤務医と一般労働は1週間で15時間も平均労働時間に差が出ていることになります。

次に、一般的に言われる「過労死ライン」と比べてみましょう。
月80時間以上の時間外労働が過労死ラインと言われています。週20時間以上の時間外労働をしていると、過労死ラインを超えます。
法定労働時間は40時間なので、上記の勤務医の労働時間データの中の、週60時間以上の労働をしている医師は、過労死ラインを超えて仕事をしているということになるのです。
つまり、4割の勤務医が過労死ラインを超えています。

平均値の週53.2時間の労働時間と言うのも、過労死ラインにギリギリ届かない程度の数値であり、勤務医の先生方が過酷な労働環境の中で勤務されていることを示すデータとなっています。

私自身も、多くの先生方と接していたことで、先生方の労働環境に何ら違和感を感じなくなっていたのですが、新人の驚嘆の声を聞くと、改めて日本の医療は先生方の献身やホスピタリティで支えられていることを実感させられます。

それでは、この労働環境を改善する方法はあるのでしょうか?
医師1人1人で言えば、転職することでワークライフバランスの取れた職場に移るということは可能で、弊社にそのようなご依頼を頂くことも多いです。ただ、勤務医全体の労働環境を改善させるとなると、業界全体の大きな構造改革が必要となります。

医学部の定員は2008年度から増員されており、今後医師数は少しづつ増えていきます。
20年後の2035年には、医師は39.7万人まで増加するというシミュレーションがあります。(2012年の医師数はおよそ30万人)
医師が増加することで労働環境は改善されていくかと思いますが、そのシミュレーションでは、女性医師や年配の医師が増えていくとしています。
単純に医師が増えて万々歳という話ではなく、女性医師や年配の医師が働きやすい環境を作っていくことも重要となります。

これまで1人の医師が実施していた仕事を、女性医師や年配の医師の力を借りて1.2人で行っていくような、ワークシェアリングが広がっていくことも重要なのではないでしょうか?

先生方の転職支援サービスを通し、女性医師や年配の先生の新たな働き方を提案するなど、医師の労働環境の構造変化を促すような行動もしていきたいと考えています。

安枝 好之(医療経営士2級)