【医療経営士コラム】医薬分業規制の撤廃議論について(2015.03.19)

最終更新日:2018.06.21
【医療経営士コラム】医薬分業規制の撤廃議論について(2015.03.19)

政府の規制改革会議が病院と薬局を同じ建物や敷地内に併設してはならないという「医薬分業」の規制について、6月の答申で規制撤廃を盛り込む方向で動いています。

これに対して、厚労省は反論。「医師と薬剤師による薬のダブルチェック機能」を持たせる重要性を説いています。

■世間的には賛成意見が多い模様

このニュースに対して、ネットで流れる意見を見ていると、「撤廃すべき」という意見の方が多いように感じます。医療機関の診療後、わざわざ薬局に薬を取りに行くということに煩わしさを感じている方は多いようで、「利便性の向上」という面で、規制撤廃を歓迎するという方の意見が多数出ています。

院内処方より院外処方の方が、薬を処方してもらうのにかかる費用が高いという面も、医薬分業規制を必要ないとする意見を多くしているのかもしれません。
院内処方と院外処方の費用差については、3月12日に規制改革会議が開いた討論会でも指摘されています。7日分の内服薬処方の際、院内処方であれば720円のところ、院外処方だと1850円。2.5倍の費用に値するサービスを患者が享受できているとは思えないという意見が議長から出たとのこと。

個人的には、医薬分業規制撤廃の中で、最も注目しないといけないのはこの「患者が享受される価値」の部分なのではないかと考えています。

■医薬分業で享受される価値とは

医薬分業による最大のメリットは、医師と薬剤師が薬についてダブルチェックできるという点です。薬漬け医療を実施し、薬価差額による多大な利益を得ようとする医療機関を監視するのはもちろん、医療機関による投与ミスをチェックする体制は、適切な薬の処方のためには必要不可欠なものです。

また、複数の医療機関を受診している患者の場合、院内処方では他の医療機関から処方されている薬の情報が分からず、飲み合わせの悪い薬を処方される危険性があります。
かかりつけ薬局があれば、全ての医療機関から処方された薬の情報を把握しているため、上記のような危険性を排除し、副作用の危険性も下げることができます。

医薬分業による患者が享受できるメリットは、自身の体に関することと考えると、非常に価値があるものだと思います。

■医薬分業の現状

しかし、実際のところ調剤薬局がダブルチェックの意味をなしていないパターンが散見されます。
先日、大手薬局チェーンが薬歴管理を行っていなかったというニュースがありました。薬局側が杜撰な管理をしているようでは、ダブルチェックとはなりません。

また、お薬手帳の普及率の低さも、ダブルチェックの機能阻害の一因です。
お薬手帳は、4歳以下と75歳以上であれば8割ほど付帯していますが、それ以外の世代では4割ほどの人しか付帯していないというデータがあります。
健康な年代は、風邪をひいた時に薬をもらうくらいなので、お薬手帳の重要性はなかなか認知されず、それがそのまま医薬分業の重要性が認知されない原因にもなっていそうです。
そういう人から見てみれば、院外薬局は単なる二度手間と感じてしまい、必要のない規制と感じるのでしょう。

規制撤廃ありきの議論ではなく、医薬分業の元々の機能、医師と薬剤師とのダブルチェック体制を構築するための方法も考えていくべきだと思います。

ある薬剤師の方から「知っている先生の処方なら間違いを指摘しやすいけど、知らない先生の処方だと間違いを指摘しにくい」という話も聞いたことがあります。
医療機関と調剤薬局を完全に切り離すことが逆にチェック機能を低下させているという考え方もできるかもしれません。

政府には、あらゆる角度から議論をして頂き、最適な結論を出してもらうことを強く望みます。

執筆者:安枝 好之(2級医療経営士)