【医療経営士コラム】「医療」×「ビッグデータ」の可能性(2015.05.27)

最終更新日:2018.06.21
【医療経営士コラム】「医療」×「ビッグデータ」の可能性(2015.05.27)

21世紀最大の技術革新:ビッグデータ

2月に、米国政府では初となる、「データ・サイエンティスト」兼最高技術副責任者に指名されたというニュースがありました。(参考記事

ビッグデータ活用の最先端を行くアメリカにおいて、政府内にデータサイエンティストがいなかったということに意外と感じる方も多いかもしれません。

アメリカ政府に招聘されたパティル氏は、アメリカ政府が所有するビッグデータの新たな活用法の伝道師になっていくようですが、特に医療・ヘルスケア分野でのビックデータ活用が期待されているそうです。

近年、さまざまな分野でのビッグデータ活用が進んでいます。
インターネットの普及で多くのデータが生み出されるようになり、コンピューターの性能向上で、多くのデータを処理できるようになったのが、ビッグデータが大きく広がった大きな理由です。

レセプトの電子化や電子カルテの普及で、大きなデータを生み出し続ける医療業界も多くのデータを生み出す業界としてビックデータの活用が期待されています。
冒頭でご紹介した米国政府のデータサイエンティストも、オバマ大統領が進める医療施策への寄与に大きく期待されているのでしょう。

 

日米の医療ビッグデータ活用事例

昨年11月にNHKで放送された「医療ビッグデータ 患者を救う大革命」という番組を観られた方はいらっしゃいますでしょうか?
この番組で、アメリカと日本のビッグデータの活用事例が紹介されていました。

紹介された事例の中で最も印象に残ったのは、アメリカの新生児医療での活用です。
番組ホームページの紹介文を抜粋します。

『早産などにより免疫力が弱い赤ちゃんにとって、感染症は命の危機につながる大きなリスク。しかしこれまでの医療では、感染が進行するまで検査などで発見することが難しく治療の壁になっていました。
そこで研究チームは心電図や呼吸モニターなどが生み出す赤ちゃんの全データを1000人分集めて分析。
すると、感染症が判明する24時間前から、血中酸素量や心拍に「前兆現象」が起きていることが分かりました。ビッグデータの活用により、感染症を「予知」できる可能性が示されたのです。来年には、医療現場への本格的な導入を目指す臨床試験が始まります。』

この事例の肝は、「前兆現象」が起こる理由が解明されていないことです。
理由が解明されていない前兆現象を判断基準とし、医師が医療行為を行っていました(抗生物質の投与などで、タイミングを間違えると新生児の命に関わる対応を行うという内容)。このシーンを見た時、私は驚きを隠せませんでした。
ビッグデータの解析とシステム構築を行ったのは、金融業界に身を置いていた、医療業界とは無縁のデータサイエンティスト。膨大なデータの解析と統計学を駆使して、医療的な見地を考慮せず、医療行為を行うタイミングを計るシステムを構築したのです。

ビッグデータは統計学の観点で物事を予知するという技術。エビデンスを重要視する医療の世界に受け入れられるには、大きな論争がを乗り越える必要があるのではないかと、個人的には思っています。

番組では、熊本済生会病院の早期退院をなし得るためのビッグデータの活用法や、看護師の最適な病棟配置を行うためにナースコールを可視化した事例も紹介されていました。
※可視化したナースコールのデータは、番組ホームページで見ることができます。

早期退院や看護配置という、病院経営においても重要な要素をビッグデータで最適化していく事例は、今後も広がっていくことでしょう。

 

日本でのビッグデータ活用の議論は始まったばかり

日本政府もマイナンバー制度の導入や、健康保険組合への「データヘルス計画」策定義務化、医療機関から電子カルテデータ提出を求めるなど、医療に関わるビッグデータ活用に向けて動き始めています。
マイナンバー制度については、医療情報だけは別IDにするように、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会から声明が出るなど、すでに論争も始まっています。

「医療」×「ビッグデータ」は、医療の発展に大きな可能性を持つものだと思いますが、安全性の確保や個人情報保護の観点など、まだまだ議論していかなければならないことが多く残されているのでしょうね。

執筆者:安枝 好之 メディカル・ステージ営業企画(医療経営士2級)