【医療経営士コラム】日本医療業界の変革と医師の業務の変容について<第3回>(2015.03.13)

最終更新日:2018.06.21
【医療経営士コラム】日本医療業界の変革と医師の業務の変容について<第3回>(2015.03.13)

第1回では、“医療機関の機能分化・連携の推進”の道標となる「医療介護総合確保推進法」について、第2回は、“医療機関の機能分化・連携の推進”のキーである「病床機能報告制度」についてお話をしました。

第1回記事はこちら
第2回記事はこちら

第3回となる今回は、医療機能分化のカギとなる、病床数と病床機能の調整はどのようにして行われるのか?都道府県が作成する「地域医療ビジョン」に、どのようにして必要病床数と機能が設定され、そして実際に病床の増減はどのようにして調整されるかをお話しながら、さらに、懸念点についても触れて行きたいと思います。

 

各地域に必要な病床数の確定方法について
各都道府県は、国が示す「地域医療構想ガイドライン」の指針に従い、15年度から16年度にかけて、以下のプロセスで「地域医療ビジョン」を策定し、構想地域ごとに必要な病床数を確定します。

①構想区域を設定する
必要病床数が決定される構想区域は、現行の二次医療圏を原則としつつ、人口規模、患者の受療動向などの要素を勘案してエリア設定される予定です。

②構想区域ごとに医療需要を算出する設定した構想区域に必要な医療需要は、4機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとに算出されます。高度急性期、急性期及び回復期については、DPCデーターとレセプトデータを基に、構想地域ごとの性年齢階級別の入院受療率を算定し、これに2025年の性年齢階級別人口を乗じて、将来の医療需要を算出します。
慢性期については、療養病床が包括算定で医療資源投入に基づく分析が出来ないため、別の指標により設定される予定ですが、在宅医療への移行促進が前提とされ、かつ、入院受療率の地域差の解消が目標設定されるため、地域によっては大幅な変更が余儀なくされる可能性があります。

参考に療養病床の都道府県別人口10万人に対する病床数(グラフ1)、及び人口10万人に対する入院受療率(グラフ2)をご覧ください。都道府県によって5~6倍の差があり、病床数がアンバランスであり、受療行動もそれに比例している事がわかります。

参考図(クリックすると拡大します)

療養病床数

③構想区域の医療需要に対する必要病床数を確定する
次に、構想区域ごとに算定された医療需要を基に、構想区域ごとに将来(2025年ターゲット)に渡って必要とする病床数が確定されます。

 

構想区域の必要病床数と現実病床数の調整方法について
以上のプロセスで確定された必要病床数と現在ある病床数が大きくズレた場合、如何にして調整されて行くのかと言うと、ここで登場するのが前回お話した「病床機能報告制度」です。
簡単に言えば、毎年行われる「病床機能報告制度」で報告された現在の病床供給数と構想区域ごとに確定された必要病床数を比較し、地域の「協議の場(地域医療調整会議)」において、需給のズレを調整し、2025年の将来構想に近づけて行く事になります。

「協議の場」の病床機能と病床数の調整によって、“医療機能の分化”は進められて行くのですが、ここで“構想地域の病床数の増減調整は円滑に進むか”という事が懸念されます。
病床数を増加させる場合は、手を挙げる医療機関は多いと思いますが、病床数を大幅に減少させる場合に、それに素直に医療機関が応じるのでしょうか。

その辺を踏まえ、まずは「協議の場」での自主的な調整を尊重しながらも、調整が進まない場合は、都道府県知事が、医療機関に対し、削減の要請、勧告、命令をする事が出来る仕組みになっています。
さらに、罰則として認定取消し、医療機関名の公表などを講ずることも出来るようです。
このように、利益誘導だけではなく、ある程度の強制力がある点が、今回の大きな違いと言えます。

また、「協議の場」での調整がスムーズに行く方法として、「新型法人」の設立が検討されています。
「新型法人」の詳細は省きますが、地域の複数の医療法人等を「新型法人」として一体的に運営し、法人内の病床の受け渡しを行えるようにする事で「地域医療ビジョン」を達成しようとする考えです。
ただ、医療機関が少ない地域には有効と考えられるが、医療機関が過密な地域では、逆に競争が生じるのではという意見や公的医療機関の扱いなどの問題もあり、まだ内容については固まってはいない模様です。

以上のように、今回の制度は、客観的な数値を基にある程度の強制力を持った仕組みである事から、病床機能の変更や増減は、今後、大きく進むと予想されます。
よって、先生方は今のうちから、所属する医療機関が構想地域において、どのようなボジションにあるのかをまず意識する事が必要であると思います。

 

懸念される人材の獲得
それでは、病床機能と数の調整がスムーズに進めば将来に向けて大丈夫かというと、そう簡単ではないと思われます。その一つが、構想地域ごとに適正な病床機能と数が整ったとしても、それを動かす人材が確保されるか?
という点です。いくらハコモノが適正に備わっても、それを動かす人材がいなければ絵に描いた餅です。

今後、何らかの制度的なアクションがある可能性はありますが、対医療機関と同じように、人に対しても強制力を行使する事は、“労働者保護”や“職業選択の自由”の観点から、多分ないと思われます。
個人的には、足りない分野や地域への人材の移動は、情報をわかり易くオープンにしながら、将来性も見据えた何らかのインセンティブを与える方法での誘導が望ましいと考えます。

最後に、私たち紹介会社として今は、県単位、地域単位での現況と将来像を把握し、先生方が将来に渡った人生設計が正しく選択出来るような、情報提供やアドバイスを行うべきであると考えています。
今回の「医療機関の機能分化・連携の推進」については、まだまだ未確定な部分もあり、今後も変化する事は多分にあるため、常に動向をチェックしながら、先生方に有益な情報提供が出来ればと思っています。

次回は最終回、「医療機関の機能分化・連携の推進」の“連携”というテーマで重要な「地域包括ケアシステム」についてお話してまいります。

最終回記事はこちら

執筆者:鈴木 友紀夫 株式会社メディカル・ステージ取締役 2級医療経営士