医師必見!知っておくべき医師の賠償責任保険について    

最終更新日:2018.06.27
医師必見!知っておくべき医師の賠償責任保険について    

医療機関が「医療ミス」を犯したとして患者から訴えられる事例は少なくありません。

医療機関は訴訟対策として医師賠償責任保険に加入していますが、医師個人が医師賠償責任保険に入る例も増えています。

医療機関と医師個人で加入した場合の保険の違いや加入の際の注意事項などを紹介します。

増加する医療訴訟と医師の賠償責任保険の関係

最高裁判所の公表するデータによると、医療訴訟の新規件数は平成16年(2004年)に1,110件とピークを迎え、その後は減少して平成21年(2009年)は732件まで減少しましたが、近年は再び増加傾向にあります。

平成28年(2016年)は870件、平成29年(2017年)速報値は857件と、平成25年(2013年)以降は800件台を推移しています。

最高裁判所:医事関係訴訟に関する統計「医事関係訴訟事件の処理状況及び平均審理期間」)

訴訟まで行かずに、示談となったケースも多いでしょう。

 

医療訴訟が増えた原因ってなに?

では、実際に医療訴訟が増えた原因とは何なのでしょうか?考えられる増加の原因を挙げてみます。 

インターネットの普及で患者側の情報源が増えた

これまで患者は、医師や医療機関以外から疾患や治療法について情報を得ることは難しいのが現実でした。しかし現在は、インターネットの普及により、患者自身が簡単に専門的な情報を集めることができるようになりました。疾患や治療経験者のブログなどの情報も増えました。

医療訴訟に対する周囲の理解を得やすくなった

医療訴訟に対する認知度が高まり、メディアなどで頻繁に取り上げられていることから医療訴訟の件数が増加したと考えられます。

医療技術の発展に伴い、副作用や合併症のリスクが高まった

近年では医療技術の発展により、新しい医療機器や医薬品が急増しています。

そうした最新の治療法は高い効果を期待できますが、もちろんリスクも伴います。

医療機関はそういったリスクについて事前に患者に説明し、同意を得ていますが、実際に重大な副作用や死亡という結果になってしまった場合、訴訟に発展するケースもあるようです。

患者の医師への信頼が揺らいでいる

患者の医師や医療機関に対する信頼が以前よりも薄れています。

だからこそ、患者と医師の双方が納得した上で、診療を行う姿勢が重要になります。

医療訴訟になったら?

実際に医療訴訟になった場合、審理の期間は平均で2年ほどかかります。訴訟の約半数は和解になりますが、残りの約4割は判決へ進みます。

ここ数年で、医療機関側が敗訴になるケースは2割で、割合としてはそこまで高くはありません。

しかし勝訴したとしても、2年間を裁判に拘束されるのは、医師として心身共に苦しい期間になることは間違いありません。

被告側には精神的な負担もかかるため、多くは訴訟前に医療機関との示談という形で終わらせることも多いようです。

このような訴訟を避けるには、患者側に予め診療内容の説明を徹底することが重要であると言えるでしょう。

万が一訴訟になった場合、実際の審理はカルテを元に進められるため、何をどのように説明したか、それぞれの医療行為について納得を得られたかどうか、誰に(患者もしくは患者の家族になど)納得してもらったかなどを具体的に記録として残しておくことが裁判のポイントになるでしょう。 

医療機関が加入する賠償責任保険

医療機関が加入している賠償責任保険は、「病院賠償責任保険」と呼ばれ、病院や診療所の開設者が被保険者になります。病床数や種類、過去の損害の状況などによって保険料は変わります。

現在は、東京海上日動、三井住友海上、損保ジャパン、日本興亜損保、アリコジャパンの5社が保険商品を扱っています。

病院賠償責任保険は、学会や同窓会などの団体を通して加入すると、保険料の割引サービスが利用できます。

一般の契約では、1事故あたりの補償限度額は1億円ですが、保険期間中であれば3億円までの支払いが可能です。

賠償責任保険では、過去の事故の訴訟にも対応するために「保険期間中」を設けています。一般のタイプの保険料は年間5万円台が多く、団体の割引が効く場合は4万円台が中心です。

最大補償の契約では、1事故あたりの補償限度額は2億円で、保険期間中であれば6億円までの支払いが可能です。

保険料は年間6万円台で、割引が効けば5万円台が主流です。 

医療機関の保険とは別に個人で賠償責任保険に加入する医師も

かつての医療事故の賠償は病院が加入する保険でカバーできましたが、近年では医療訴訟の件数が増加し賠償額も増えたために、病院側の保険だけでは賄いきれなくなってきました。

経営不振の医療機関で訴訟が起きた際には、支払い能力がないため医師個人も訴訟の対象になることがあります。

保険の契約内容によっては医師個人の責任まで賄えないという場合もあります。

特に病院の経営が悪化しているため、原告側が病院からのみでは十分な賠償金が得られないことから、医師個人も訴えるケースが見られます。

「日本医師会医師賠償責任保険」は、日本医師会の会員であれば個人でも加入でき、開業医であれば自動的に加入するシステムになっています。

1事故あたりの補償限度額は1億円で、保険料は医師会費から支払われますが、金額は会員の分類によって異なります。

医師会の賠償責任保険は、医師が退会したり死亡したりした場合、「特例事項」といって保険の期間を10年後まで延長することもできます。

さらに、最近では勤務医を対象にした「勤務医賠償責任保険」も注目されています。

多くの賠償責任保険では、非常勤やアルバイトの医師でも加入でき、標榜科目以外で診療を行った際にも補償されます。

1事故あたりの補償額が2億円(保険期間中は6億円)のタイプであれば安心ですが、保険会社によっては3千万円からのコースもあります。

一般的な保険料は1億円の補償額で5万円台、2億円のタイプで6万円台が主流です。

各保険会社で商品が異なるため、詳細はそれぞれの会社に確認しましょう。

おすすめの賠償責任保険を紹介している学会もあるので参考にするのも良いでしょう。

医師転職の際は賠償責任保険にも注意しよう

転職や転勤などで勤務先医療機関が変わったり、アルバイトで新しい職場が増えたりした時には、万が一に備えて勤務先の賠償責任保険の加入状況について調べる必要があります。

日本医師会医療賠償責任保険に加入している医師は、転職後も補償は変わりませんが、訴訟の内容によっては賠償金額のすべてを賄えないことがあります。

また、勤務医から開業医へと立場が変わる場合も、医師賠償責任保険の見直しが必要です。

それぞれの状況に合った医師賠償責任保険を選び、不測の事態に備えておくことが大切です。

転職を考えている方は、専任の転職エージェントに賠償責任保険についても問い合わせてみましょう。希望している勤務先が加入している賠償責任保険について、エージェントから確認することができます。

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