常勤の産婦人科医・産科医・婦人科医が転職する際に知っておくべき事

現在の日本では、特に産科医の不足が深刻な問題になっています。医師不足の医療機関では激務を強いられた結果、退職する医師が増えるという悪循環が発生しています。
産科医の不足から分娩の受け入れを休止せざるを得なくなり、その結果お産を扱わない婦人科のみが残る病院も多く見られます。
生命誕生の瞬間に立ち会える素晴らしい現場で、いったい何が起きているのでしょうか。今回は産婦人科・産科・婦人科の転職についてまとめました。
産婦人科医・産科医・婦人科医のキャリアパス・転職動向
近年、産婦人科を希望する若い医師が減少しています。その背景には、女性の働き方の変化や晩婚化の影響による少子化の問題をはじめ、高齢出産のトラブルの増加、訴訟のリスクが高い点などが挙げられます。
特に都市部よりも地方で産婦人科医不足が顕著に現れており、転職において売り手市場であることは間違いありません。
産婦人科では、主要な四分野と言われる周産期、生殖や内分泌、婦人科腫瘍、女性のヘルスケアを幅広く学び、新しい生命の誕生から女性の体のケア全般を習得します。
若い医師は分娩の経験やノウハウを身に付け、「産婦人科専門医」「日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医」「周産期専門医」などの資格を目指します。
近年、増加傾向にある乳がんや子宮がんなどの腫瘍に関わる「婦人科腫瘍専門医」は、数多くの臨床経験が必要になります。
また、婦人科検診の重要性が認知され始めているため、「マンモグラフィ読影認定資格」や乳腺超音波検査(乳腺エコー)の技術も必須です。
さらに不妊治療の分野では、不妊治療専門クリニックの人気が上昇して医師が足りないことから需要が高まっています。
不妊治療では学会の定めた各種臨床研修を受けて「生殖医療専門医」を目指す方法や、「生殖医療コーディネーター」といった資格を有する道があります。2016年4月の情報では、生殖医療専門医が594名、生殖
医療コーディネーターが86名認定されています。
一方で学位を取る方向に進み、研究のために大学院への進学や海外留学を念頭に置く医師も多くいます。
ここからは転職動向をみてみましょう。求人の傾向としては女性医師のニーズが大変高く、特に出産を経験した医師には話がしやすいといった患者側の意見が寄せられています。
また、高齢出産などのハイリスクな分娩や未熟児の対応を行う周産期母子医療センターの設置が増えているため、求人は増加傾向にあります。ここでは性別を問わず多くの産科医が必要とされています。
都市部では、手術の対応が可能な医師が多く求められています。また、新しく女性外来を設置する機関では、専門医であることが条件というケースが多く見られます。
産婦人科医・産科医・婦人科医の平均年収は?
産婦人科医の全体のとしての年収は、約2,000万円以上が6割に上るという報告もあります。ただし関東や中部に限られた額で、地域によってばらつきがあります。
とあるデータによると、大学病院や民間の病院でも産婦人科医の年収は、2,000万円以上が半数を占めていますが、クリニックでは1,400万円~2,000万円の層が一番多いという結果が出ています。
ただし、働く時間が制限される女性医師が一定数いるために、年収が600万円くらいでも満足だという話も聞かれます。産婦人科については高収入かどうかだけではなく、働く環境ややりがいの面で充実を求める医師が多いと言えるでしょう。
これからの産婦人科医・産科医・婦人科医に求められるスキル
平成26年(2014年)に厚生労働省が行った「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によると、産婦人科の平均年齢は50.3歳、産科が45.5歳、婦人科が56.5歳という数値が出ています。
診療所に限った平均年齢を見ると、産婦人科が60.8歳、産科が53.2歳、婦人科が60.8歳と高齢です。この結果から、近い将来産婦人科の医師が多数必要なことは目に見えています。
日本では妊娠・分娩、不妊から更年期まで全て診る産婦人科医も多く、精神的なタフさと体力が必要な科であることは言うまでもありません。
具体的なスキルとして、産科の場合は合併症のある妊婦の対処や羊水検査、染色体異常に関する診断と管理の経験、人工妊娠中絶などの手術などの技術が必要です。
婦人科では内科的な診療だけでなく外科の知識や手技も求められ、検診マンモグラフィ読影認定を応募の条件としている機関も多くあります。
近年増加している子宮内膜症、子宮筋腫などの治療や、更年期障害や月経に関する症状の知識も必要になります。
さらに、子宮がん、卵巣がんなどの厳しい症例の場合は、患者の気持ちに寄り添いながら手術や今後の治療方針を決定するため人柄も重視されます。
不妊治療においては、カウンセリングや指導、管理、支援など、幅広い経験と知識、技術が問われます。
全体として女性医師が有利な科ですが、もちろん実績がある男性医師が良いという患者もいるので、転職の際は今までのキャリアを充分に生かせるよう積極的に情報収集をしましょう。
産婦人科・産科・婦人科の転職でのオススメ求人
産婦人科・産科・婦人科では、転職を希望する医師より募集案件の数が圧倒的に多い状態です。
地方では有利な条件を提示している所もあり、例えば和歌山県では、医師の確保のため返還免除付きの資金貸与制度を設けています。
また、2017年2月現在、長野県では産科医の確保に県として取り組んでおり、交渉次第では良い待遇が得られる可能性があります。
転職を考える時は、専門分野や技術などのアピールできる点をまとめておきましょう。
産科の場合、自然分娩を主に行う施設では当直が週1回、土日の当直が月1回というパターンが多く、無痛分娩を行う所では、原則として計画分娩を実施しているため、ある程度の予定が立てやすいと言えます。
産科医が転職する際に押えておきたいポイントとして、
- 診療方針、姿勢などの把握
- 設備やスタッフの状況
- 分娩の受け入れ体制や当直のサイクル
- 新生児の対応、小児科や助産師との連携
- 訴訟に対する考え方、過去の例
などがあります。待遇などで譲れない条件は、細かく考えておきましょう。
婦人科や不妊治療では当直やオンコールがないので、女性医師が結婚した後も家庭との両立がしやすい職場になっています。
転職後の具体的な働き方としては、常勤を希望しながらも家庭の状況から非常勤の仕事を探す例や、不妊症や更年期などの専門外来を週に数コマ開く方法、一般内科で診療しながら婦人科の外来の新設を目指す方法などがあります。
もちろん、常勤とアルバイトを兼務して収入とスキルをどんどんアップしたいという医師もいます。
インターネット上でも求人はたくさん出ていますが、特に産婦人科の転職の場合、たくさんの情報から自分に合った職場を見つけるのは容易ではありません。
医師専門の転職サイトを活用すれば、仕事の合間にも効率よく探すことができます。
「Dr.転職なび」では、医療経営士の資格を持った転職エージェントがていねいにサポートを行い、希望に合った職場を紹介しています。
例えば、「地域住民から分娩再開を切望されて求人を出している」などの希少で有利な情報は、ぜひ信頼できるエージェントに紹介してもらいましょう。
日々の業務に忙殺され、一刻も早く今の職場を離れたいという一心で転職を希望する産婦人科医が増えていますが、なぜ医学の道に進もうと希望したのか、初心に戻って考えてみる時間も必要かもしれません。
努力して蓄積してきたキャリアを生かせる、良い転職先が見つかることを願っています。
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