産業医の平均年収っていくら? 産業医と勤務医のメリット・デメリット

最終更新日:2017.09.12
産業医の平均年収っていくら? 産業医と勤務医のメリット・デメリット

 2015年の12月に施行されたストレスチェック制度によって、一般にも広く知られるようになった産業医という職種。今回は、産業医の具体的な仕事内容をご紹介していきます。

そもそも産業医とは?

産業医とは、労働者数が50人以上の事業場で選任する義務が生じる、専門的な知識を持った医師のことを指します。

詳しい定義は、日本医師会「認定産業医」サイトに記載された記述を見てみましょう。

厚生労働省令で定める要件を備えた者としては、労働安全衛生規則第14条第2項に次のとおり定められています。

日本医師会認定産業医は、次の1に該当します。

  1. 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であって厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
  2. 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であって厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であって、その大学が行う実習を履修したもの
  3. 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
  4. 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常勤勤務する者に限る。)の職にあり、又はあった者
  5. 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者

引用:日本医師会「認定産業医」

具体的な職務内容としては、企業の事業場で健康診断や面接指導を通して、労働者の健康管理、保持増進のための知識を持ち、アドバイスを行う仕事です。

労働者が健康を害した場合、その原因究明と再発防止のための措置に関する知識を持っていなければなりません。

産業医は、毎月1回事業場や作業場などを見て回り、正しい作業方法や労働衛生が守られているかどうかを確認すること、それが守られていないようであれば、労働者が健康を損なわないように必要な措置を講じる必要があることが労働安全衛生規則に定められています。

産業医の普及度合いを測る選任率は80%台に留まっており、異常所見があった場合に医師の意見を聴いているケースに至っては40%台など、非常に低い状態です。

約16万件の事業所が産業医を選任しなければならないのに対し、産業医の数は約8万人程度と圧倒的に人数が不足している状態が問題視されています。

 

給与面で見た産業医と勤務医の違い

勤務医の場合、平均年収は約1500万円と言われています。

これは、働いている病院の規模や役職によっても大きく異なります。

若年層、規模が小さい医院などから大病院の役職付き、高齢の医師まで含めると、600万円弱から2000万円強に至るまで幅広い年収となっています。

産業医の場合、平均年収は嘱託契約か、専属契約かによって大きく異なります。嘱託の場合は週1~2回で1回3万円前後、週2回で1回3万円と考えると、年収は300万円程度となります。

ところが、経験を積むことによって専属の産業医となれれば、勤務医と同等の給与をもらえることがあります。大手企業の専属の産業医の場合は、平均年収が1500万円程度と言われています。

退職金などがあるかどうかは企業によっても異なりますので、それにより、生涯賃金に差が出る可能性はありますが、勤務医同様、高給な仕事であることは間違いありません。

とはいえ、勤務形態のデメリットでは嘱託契約の場合、1回の訪問で2時間程度、約3万円前後の収入を得られるので時間給としては非常に良いですが、嘱託先企業への訪問スケジュールをうまく調整できなければ、収入が激減する可能性があります。産業医は専属になれるまで、年収や勤務形態が不安定であることがデメリットと言えます。

 

生活面で見た産業医と勤務医の違い

産業医の勤務形態のメリットとしては、定時で帰れるところでしょう。

専属の産業医の場合、基本的に事業場での勤務となりますから、その企業に勤める社員と同じように、例えば9時から17時の勤務、週休二日制での勤務形態になります。

また、会社員とは違って残業が発生するようなことはほぼないため、定時で帰宅することができます。産業医は、健康を害さないためのアドバイスを行う仕事のため、救急外来のような緊急度が高い仕事はありません。

そのため、このような勤務形態で働くことが可能となっています。

対して勤務医の場合は、深夜の呼び出しや残業、当直などがあり、1週間に50~60時間の労働をしている医師が非常に多く存在します。

週60時間以上の労働は過労死ラインと言われていますから、多くの医師が過労死ラインの労働時間で働いていることがわかります。

また、時間あたりの給与に直すと専属になった産業医に比べて低くなる可能性がありますね。

しかし、勤務医の場合、医師として直接人を救うことに関われるという精神面のメリットがあります。

産業医という立場だと、医師といえどもあくまでアドバイザーとして間接的な関わり方しかできないため、場合によっては思うように改善されず、もどかしく感じるかもしれません。

企業が運営している事業場を改善しようとしても企業が動かなければ、苦しんでいる人たちを救うことはできないのです。

 

こんな医師に産業医はオススメ

勤務医に比べ、自分の生活を保ちながら高給をもらえる可能性がある産業医。以下のような特徴を持った人に産業医になることをオススメします。

  • ワークライフバランスを保ちたい
  • 自分が関わることで企業の労働環境を改善したい
  • 相手のことを理解しようとする協調性がある
  • 問題点を聞き出すためのコミュニケーション能力がある
  • ビジネス感覚と医師の知識をミックスして引き出しを増やしたい

ワークライフバランスを保ちたい

まず、メリットに挙げた、ワークライフバランスが取れる勤務形態。

最初は年収が低くても、経験を積んで専属になることができれば、バランスの取れた生活で高給を手に入れることができます。

 

自分が関わることで企業の労働環境を改善したい

過労死などで失われてしまう人の命や、労働環境によって心の病にかかってしまう人を未然に防ぐために、自分が関わることで労働環境を改善したいと考えている方には、ぴったりの職業です。

 

相手のことを理解しようとする協調性がある

今まで自分が関わってきた人たちとは異なる領域の事業場を担当します。

そのため、相手の組織がどのような構造になっているのか、何が問題となっているのかに興味を持ち、知ることから産業医の仕事は始まります。

それに興味を持てないと対策も講じられませんので、相手や、相手企業に興味を持てることがとても重要です。

 

問題点を聞き出すためのコミュニケーション能力がある

労働環境が悪化している問題点に関して言えば、この人に話しても意味がないと思われて話してもらえないというケースもあれば、当事者が問題点を勘違いしているケースもあります。

信頼され、話してもらえるようなコミュニケーションや、本当の問題点を会話の中でどう引き出すのかという能力が必要となります。

 

ビジネス感覚と医師の知識をミックスして引き出しを増やしたい

産業医は医師という専門的な知識を持ちながら、企業にアドバイスできるように企業構造や企業が動くポイント、必要な優先順位を理解し、判断できることが重要です。

また、専属になるにはその両輪をバランスよく回し、問題点の無い事業場を作り上げるという成果を上げられなければなりません。そのバランスを崩すことなく、介入できる人が向いています。

通常の医師とは違うスタンスを持ち、介入していく難しさもありますが、日本の社会問題ともなっている労働環境の改善に専門的な知識を持って取り組む産業医という仕事は、とても価値のある仕事です。

専門性と企業に対する知識を深め、引き出しを増やしていきたいと感じる方はぜひ目指してみてはいかがでしょうか。

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