医師が「医局を辞める」。その理由から見える医局の現状

最終更新日:2017.09.14
医師が「医局を辞める」。その理由から見える医局の現状

新臨床研修制度の出現や産業医など、大規模なヘルスケア市場の盛り上がりから、臨床現場のみでなく、様々な場所で活躍をする医師は非常に増えています。

従来、医師と言えば【医局員として大学病院で症例を積むのが当たり前】とされていましたが、現在は医局に所属せずに民間病院で独自のキャリアを形成する医師も非常に多いです。

しかしながら、いまだに医局の力は強く、専門医資格の取得に必要な症例経験を積むために、多くの医師が大学病院で勤務するのが現状です。

医局員には、ならではの悩みがたくさんあるようで、【医局を辞めて新しいキャリアを歩みだしたい】と考え、転職をする医師も多いです。

今回は私のエージェントとしての経験談を交えて「医師が医局を辞める理由」と「その後のキャリア形成」の2つの軸からお話させて頂きます。

医師が医局を辞める理由

なぜ大学病院の研修医が減ったのか

新臨床研修医制度の導入によって、医師は自由意志で自身の研修先医療機関の選択をする事が可能になりました。そのため、大学病院での臨床研修を希望する医師が減少したため、地域への医師派遣数が著しく減り、逆に都心での臨床研修希望者が増加しました。

これがいわゆる「医師偏在」の発端と言っても過言ではないでしょう。

まずは、「なぜ大学病院で臨床研修を受けようとしないのか」について解説致します。

 

専攻希望分野の症例を経験する事が出来ない

様々な意見がありますが、医局員を選ばずに、民間病院で臨床研修を受けている研修医の多くが「大学病院は、担当分野が細かく分けられすぎていて、希望する症例を学ぶ事が出来ない」と考えるようです。医局によって得意とする症例や患者層は当然異なるため、自身が専攻を希望する分野と医局が得意とする症例にずれがある場合、医局ではなく一般病院で臨床研修を行うようなケースがあるようです。

また、臨床研修を受けるにあたって、指導員の存在も大きな判断材料のようです。

全国的に有名な指導医の元で臨床研修を受けたい、といった理由で大学病院ではなくその指導員がいる民間病院での臨床研修を希望する医師も中にはいるようです。

反対に、臨床研修の段階でハッキリと将来のキャリアが決まっていて、医局が得意とする症例が合致する場合は、関連する症例を多く学ぶ事が出来るため、大学病院で臨床研修を受けるようです。

 

医局を辞める理由

弊社にお問合せ頂いた医局員の方の転職理由で非常に多かった理由をいくつかご紹介致します。

  • 雑務・時間外の対応が多すぎる
  • 医局員の数が多い為、担当出来るオペ数・患者数に限りがある
  • 給料が低い
  • 医局内の派閥など、人間関係にうんざりしている
  • 医局人事の転勤に対する不満

他にも様々な理由がございますが、一般的に多いのが以上の5つでしょう。

大学病院には数多くの臨床医がいるため、症例数が多い大学病院でも実際にオペを担当出来る数は、ほんのわずかなようで、専門医資格を取得後、一般病院へ転職する医師も多いようです。

ただ、専門医資格を取得したからといって、すぐに転職出来るわけではありません。

一般企業と違って、医局を辞めるには長い時間を要する事が多いようです。

次は「医局の辞め方」について説明致します。

 

医局の辞め方とその事例

仕事を【辞める】事は決してハードルが高い事ではありませんが、一般企業と違って【医局を辞める】という事は非常にハードルが高いようです。専門医資格を取得後、一般病院への転職をしたいと考えていたが、医局の退局する事に高いハードルを感じ、転職を諦めてしまった、といったケースもございます。

実際に退局しようとした医師が、退局の旨を伝える際に教授や医局長とトラブルになってしまったという話もあり、なかなか退局に踏み切る事が出来ない医師も多いです。

もちろん、この話が全ての医局に共通するわけではなく、円満に医局を退局し、民間病院で新たなキャリアを描いている医師もいらっしゃいます。

以下に弊社エージェントが実際に担当した医師の退局事例の一部をご紹介致します。

 

うまく退局できた例

  • 退局の旨を伝えると、教授にきちんと面談の場を設けて頂き、円満に対局する事が出来た。円満に退局し、今でも友好な関係を保っている。
  • まず医局長に退局について相談したことで、教授への伝え方のアドバイスも頂け、円満に退局することができた
  • 教授の意向に沿うように、医局のタイミングを半年後にすることで、退局の意思を受け入れて頂けた。タイミングは半年後より少し遅くなってしまったが、トラブルなく退局出来た。

トラブルとなってしまった例

  • 退局の旨を伝えると、裏切り者扱いされ、口喧嘩となってそのまま喧嘩別れとなった。
  • 「転職先の医療機関に根回しをして、働けないようにする」といった意味合いの遠回しな脅しをされ、退局を諦めてしまった
  • 退局の意思を伝えていたが、研修医の教育係を理由に退職時期を何度も引き延ばされ、内定先の医療機関から「これ以上待てない」と言われ、転職を断念した。

など、円満に医局を辞める事が出来た医師もいれば、退局が原因で人間関係がこじれてしまった医師もいるようで、伝え方や医局の風土によって異なるようです。

 

医局を円満に退局するためには

円満に医局を退局出来た事例と、トラブルになってしまった事例の2つに分けて事例をご紹介致しました。

自身の将来のために一般病院への道を希望する方は、必ず医局の退局という大きなハードルを越えなくてはなりません。

誰だって円満に医局を退局するにはどうすれば良いのか?と考えるはずです。

今回は医局を出来る限り円満に退局するために出来る事をいくつかご紹介致します。

 

退局のタイミングをこちらで決めず、医局と相談する姿勢を見せる

転職先から内定が出たタイミングが、退局の意思を伝えるベストなタイミングです。

契約まで締結してしまうと、勤務開始時期も確定してしまい、医局側の意向に沿えなくなります。

内定が出た時点で、転職先に医局との退職交渉に入ることを伝えて、契約締結まで少し待ってもらい、医局の意向に添える状況で交渉に臨むことで、うまくいくことが多いです。

 

最初から教授へ伝えずに、医局長への相談から始める

まずは医局長に相談することで、根回しやアドバイスをもらえて成功したということも多いです。

最初から教授に話をするというのは勇気がいるもの。医局長に正直に話をして、どのような反応をするかを見るのもよいです。

 

その他にも、医師の状況に応じて円満に退局するために必要なことが多くあります。

共通して言えることは、新しい転職先との雇用契約を交わす前に、退局の意思を伝えることです。

その反応を見て、雇用契約の内容を細かく決めていける状況を作っておくことで、医局側との交渉も進めやすくなります。

実際に医局を出て転職する場合は、担当してもらっているエージェントや直近の上司などに退局の意思を伝えるタイミングを相談して、最適なタイミングや伝え方を決めていきましょう。

 

医局を出る【メリット】と【デメリット】

これまで、医師が医局を辞めたいと思う理由と、円満に医局を出るために出来る事の2点を説明してまいりました。

では、医局を出る事で医師が得られる恩恵は何なのでしょうか?

最後に医局を出るメリットとデメリットを簡単にご紹介致します。

 

医局を出るメリット

臨床現場以外など、活躍の場が広がる

医局に所属していると、大学病院で勤務しつつ、自身の研究を進めていきますが、

専門医取得後に医局を出ると、一般病院やクリニック、臨床現場以外で勤務するなど、活躍の場が非常に幅広い事が実感出来るかと思います。

医局という大きなピラミッド体制から外れるため、求められる業務量・スキルはその分大きくなりますが、十分なやりがいを感じる事が出来るでしょう。

メンタルヘルスや予防医学の考え方の普及から【産業医】についても非常に注目が高まっているため、新たに産業医資格を取得し、医療機関ではなく企業でスキルを発揮する事も出来ます。

 

給料が上がる

給料はやはり大学病院より、一般病院・クリニックの方が給与水準は高いようです。

その分、求められる業務量やスキルは高くなる事はあるでしょう。

大学病院では「給料が低いから、医師アルバイトなどの副収入で生計を立てている」といった臨床医も少なくありません。

 

担当出来る患者数・オペ数が増える

大学病院と違って、重度の患者や稀な症例を経験出来る可能性は低くなりますが、一般病院、特に地方では担当患者数・オペ数は確実に増えるでしょう。

「実践を積んで、医師としてのスキルをもっと高めたい」といった医師は地方の医療機関へ転職する事もあります。

 

転勤など、異動の心配がなくなる

医局を離れるため、医局人事による転勤の心配はなくなります。

一つの地域で長く勤務したい、勤務地を転々としたくない、といったニーズを抱いている医師にとって転勤の不安がなくなる事は大きなメリットとなるでしょう。

 

医局ならではの人間関係からの解放

医局には大きなピラミッド構造を模した上下関係や、派閥間の争いなど、人間関係に悩まされている医師も多いようです。

医局を出る事で独特の人間関係から解放されるという意味では大きなメリットとなるでしょう。

ただ、だからといって一般病院は全くそうではないわけではないようです。

厳格な上下関係がある医療機関もあれば、そうではない医療機関ももちろんあります。

医局を出る事をゴールにするのではなく、きちんと自身の人格の合った医療機関を見極める事が大切です。

方法として、まずはスポットや定期でのアルバイトをしてみて、雰囲気を下調べするのがオススメです。また、転職エージェントに話を聞いてみるのも良いでしょう。

 

医局を出るデメリット

医局を出る事によるデメリットは以下が代表的ではないでしょうか。

 

学位の取得が出来なくなる

大学病院で学位の取得しているかどうかで医局内でのキャリアパスは大きく異なります。

一般病院でも学位を取得している医師の場合、相応の地位や給与で転職する事が出来るようです。

大学病院で臨床医として勤務する医師は【専門医資格を取得する事】と【学位を取得し、大学病院内で相応のキャリアを築く事】の2つが大きな目的として挙げられます。

その他にも医学研究を続けたい等の理由もあるかと思います。

しかし、一般の臨床医として働きたいという医師にとって、相応の努力と時間を要する学位は必要はないでのは、といった意見もあります。

それぞれ描くキャリアパスに合わせて学位を取得するかしないかを決定する必要があります。

 

医局派遣の異動による様々な経験が出来なくなる

医局派遣によってさまざまな医療機関で勤務する事が出来るのは医局の良いところでもあり、悪いところでもあります。

一般病院では出来ないような経験を転勤によって経験する事もあるため、こういった意味ではデメリットとなるでしょう。

 

以上、医局を辞める理由、円満に医局を辞める秘訣、医局を出る事によるメリット・デメリットについてご紹介して参りました。

自身の医師としてのキャリアプランを考える上で【医局を辞める事】が正解では決してありません。

自身が思い描くキャリアプランと現状を照らし合わせ、実現するためには何をすべきかを考えた上で、医局を出るかどうかを判断しましょう。

「自身のキャリアプランがまだ固まっていない」「本当に医局にいる事が自分にとって最適なのか」といった疑問をお持ちの方はまずは一度誰かに相談してみるのが一番でしょう。

医師転職エージェントであれば、様々な医師紹介経験則からあなたが思い描くキャリアプランの最善策をご提案致します。

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