産婦人科の開業医の年収はいくらなの?

近年では、少子化や医師不足に伴う激務の影響を受け、産婦人科の医師や診療所は減少傾向にあり、産科部門の閉鎖も相次いでいます。
その中で、近くに出産する病院がない、緊急時の受け入れ体制がないといった問題に歯止めをかけるため、開業に踏み切る産婦人科医もいます。
ここでは、産婦人科の開業医の年収や開業した理由、開業医の労働環境や開業の際に気をつける点をまとめました。
産婦人科の開業医の平均年収
産婦人科の開業医の年収は、約2,600万円~3,000万円という数値が出ています。
しかし、この年収は経営が軌道に乗って安定した結果の数値で、開業後すぐは多額の返済に追われることを頭に入れておきましょう。
産婦人科を開業するのに必要な資金は、およそ5,000万円~6,000万円と言われています。
土地や建物で約3,000万円、超音波診断装置やX線撮影装置などの機器、内診台や診察用ベッド、待合室の椅子や受付カウンター、電子カルテなどの設備で2,000万円ほどかかります。
開業した際の月次収支の例をあげると、1ヶ月の診療報酬が約1,200万円、それに対して人件費が約370万円、医薬品費が100万円ほどかかります。
その他、産婦人科特有の各種サービスや備品などの諸経費の約440万円をマイナスすると、1ヶ月の収益は290万円ほどにしかなりません。
ここから月々の返済をし、生活費に当てていく状況を想像すれば、当初の年収はご想像いただけるでしょう。
ただし、産婦人科医が大幅に不足している地域に開業した場合、分娩数が期待できるために多額の年収が得られる可能性もあります。
年収が安定すれば、他の医師を雇って業務を分担することもできます。
産婦人科医が開業する理由
次に、産婦人科の開業医になる決意をした理由を見てみましょう。
激務や内情による方向転換や、夢や憧れ、理想を実現する形など様々ですが、やはり自分自身の可能な範囲で「生命の誕生」に関わりたいという思いが根底にあるコメントを数多く見かけました。
- 勤務医として行き詰まり、本来抱いていた地域密着型の診療に踏み切った。
- 勤務医の激務や訴訟から解放されたかった。
- 勤務医ではできない理想の医療を実現したかった。
- 勤務医のポスト争いや異動、定年退職を避けたかった。
- 勤務医の年次による定額制の年収に不満があった。
- 近隣の産婦人科の閉院を引き継ぐような形で開業した。
- 子育て中の常勤は無理だと思い、自分のスタイルに合わせて開業を決意した。
- 高度な医療を提供する個人病院に憧れ、自分でも実現したかった。
- 海外で学んだ診療のスタイルを日本でも提供したかった。
- 外来のみの診療所を開業し、出産は大規模病院に任せて地域連携を深めた。
- 自分の診療所で生命の誕生に関わりたい、両親の笑顔が見たい。
産婦人科の開業医は休めない?
分娩を受け入れる産婦人科の開業医は、24時間365日の体制を覚悟していると言われます。
出産が終了するまでは緊張が続き、その間にも救急の患者が運び込まれ、状況によっては緊急手術になる場合もあります。
出産が相次ぐ時には終夜連続で勤務し、2~3時間の仮眠しか取れないという開業医もいます。
産婦人科医が他に在籍するクリニックでも、4日ほど連続の休みを取るのが限度という話もあります。
年収以上の働き方をしている開業医がほとんどです。
しかし、最近では2人~6人ほどの複数の産婦人科医で開業するケースが増えており、業務を分担する方向に変わって来ています。
勤務医時代の先輩後輩、親子や夫婦などによる開業や、大学病院のメンバーを中心に産婦人科を相次いで開業している医療法人もあります。
一方、産科を開設せずに婦人科のみで開業する場合は、働くスタイルが大きく異なります。ほとんど定時で終了し、休日も確実に設定できるのが利点です。
開業をする上で気を付けなければならない事
女性の産婦人科医のニーズが上昇しているため、女性医師の開業の成功率は高いと言われています。
しかし、成功して年収を安定させるには、入念な情報収集としっかりとした経営理念が必要です。
得意分野を生かし、他の診療所とは違う点を積極的にアピールしましょう。最後に、開業に向けて注意する点をまとめました。
女性の口コミを大切にする
産婦人科を利用した女性の口コミは、近年インターネット上であっという間に情報が広まります。
医師の腕の良さだけでなく、快適な空間も高評価のポイントとなります。
例えば、女性に好まれるおしゃれで高級感のあるインテリアや、入院する部屋のグレードの設定や清潔感、グルメに喜ばれる食事やエステなどのサービス、上の子供を預かる保育室の完備などが他のクリニックとの差別化に重要とになります。
診療点数に注意する
産婦人科の診療点数は他科に比べて低いため、開業の際は注意が必要です。
産科や不妊治療の保険外診療は、経営を左右し年収に響いてくる分野になります。
ただし、妊婦健診のみか分娩も受け入れるのかによっても異なり、不妊治療でも人工授精と体外受精では開業資金の額が変わってきます。
どこまでを請け負うのか、クリニックの方針をしっかり決めておきましょう。
がん検診の重要性
近年、乳がんや子宮がんの患者が増加傾向にあります。
治療ももちろんですが、予防に力を入れるのも産婦人科医の仕事です。
来院までのハードルをできるだけ低くして、がん検診を積極的に受けるよう働きかけましょう。
地域の大きな病院との連携も大切になってきます。
将来の医師やスタッフを確保
産婦人科では、開業後のスタッフも大切な役割を担います。
新しく医師を雇う場合も考えて、見込みのある人材は声を掛けておきましょう。
看護師や受付スタッフも、クリニックのイメージを左右する重要なポイントです。
ここまで、開業医についてたくさんの内容を紹介しました。
産婦人科の開業医が声を揃えて重要だと言うのは「他にはないメリットをインターネットでどんどん発信する」こと、そして開業医ならではの「患者とじっくり向き合いプライマリ・ケアを大切にする」ことです。年収アップに繋がる集患はこうしたことから始まります。
そして深刻な産婦人科医の不足には、産婦人科の労働条件を改善して魅力的にしていく必要もあるでしょう。
地域の人々に信頼され、医療の現場で見本とされるような産婦人科が開業できるよう、応援しています。
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