小児科で開業した場合の年収や労働内容ってどうなの?

インターネット上では、開業医は高収入と言う情報が流れています。
特に小児科は高額の年収が得られるとされており、収入UPを狙ってクリニック・医院を開業する小児科が増えています。
ここでは、実際の年収や、勤務医との違い、小児科の開業医の割合や開業に向けての注意点などをまとめました。
小児科の開業医の平均年収は2,000万円以上?
厚生労働省が平成27年(2015年)に発表した「医療経済実態調査」によると、開業医の平均年収は2,914万円と報告されています。
その中で小児科医が開業した場合の平均年収は3,300万円という数値が出ており、勤務医の年収と比較すると高額でしょう。
しかし、開業したからといって必ず高年収を得られるわけではありません。
小児科に限定されることではなく、クリニックや医院を開業するには莫大な資金と時間などさまざまな障害があります。
さらには立地や口コミなど、さまざまな条件を満たす必要があり、これらを全て満たすことで初めて高年収を得ることが出来ます。
開業資金
まず、医院やクリニックを開業するに当たって、家賃や医療設備を整える必要があります。
診療科によって必要な設備は変わるため、必要資金は変動しますが、大体開業に必要な資金は2000~3000万円必要と言われています。
しかし、これは開業するために「最低限」必要な金額です。最近では集患方法の一環としておしゃれな内装やリラックスルームの完備、子持ちの方も来院しやすいようにキッズスペースを確保するなど、従来のクリニック・医院らしさを感じさせないような内装を施す傾向があります。
立地
開業医として成功するために非常に重要な要素であると言えるでしょう。もちろんではありますが、診療科によって患者層は大きく変動します。
ゆえに標榜する科目に周辺住民が来院するのかどうか、想定される患者層が立地周辺にいるのかどうかをきちんと把握する必要があります。
最寄り駅の規模(一日の利用者数・年齢層)、分譲住宅やマンションの数など、自動車の利用頻度なども調査し、駐車場を用意するかどうかを決定する必要があります。
また、周辺に競合となるクリニックがあるかどうかも事前に確認すべきでしょう。
従業員
従業員の確保は、安定してクリニックを運営していく上で非常に重要な要素と言えるでしょう。
一人でクリニックを運営する医師も中にはいますが、休日の確保や複数いる患者を診察する時間が足りないなど、一人ではうまくクリニックを経営することは出来ないでしょう。
したがって、開業するに当たって事前に知り合いや医師紹介会社などで従業員の確保が必要と言えるでしょう。
経営スキル(集患方法)
あらゆる患者の症状に柔軟に対応する医療スキルを保持していなければならないのはもちろんのこと、クリニックに集患し、安定して収益を上げなければならないのが従業員の給与を支払うこともできません。
ゆえに開業医は医療スキルとは別に経営に関する知識・スキルを身につけなければなりません。
しかし、いきなり経営と言われてもよく分からない、自身がないと思われる方もおられると思います。
そんな方は開業支援コンサルティングサービスに相談あるいは、転職エージェントへ相談するのが良いでしょう。
これらのサービスのエージェントは医療人材業界の専門家と言えるでしょう。
何か気になることがあれば、一度転職エージェント等に相談してみてはいかがでしょうか。
開業のみでなく、違った方法でのキャリアアップが見つかるかもしれません。
小児科の開業をする上で気を付けなければならない事
小児科医が開業した際には年収アップが見込まれますが、実現するには多くの条件・障壁があることをお話ししました。
開業に向けて、その他の注意点や考えておく内容をお伝えします。
医師と経営者の2足のわらじ
開業医とは、経営者になることです。そこでは、専門職である医師とはまた別のスキルが求められます。
人事管理、薬品や医療機器のメーカーとのやりとりなど、たくさんの業務が待っています。
開業に向けて、コンサルタント会社と話し合うこともあるでしょう。全てを丸投げせず、経営の知識も頭に入れておきましょう。
保護者も患者のうち
小児科では、親が病院を選んで子供と一緒に来院します。
特に母親の口コミは重要で、医師の印象や対応が良ければクリニックは人気が出るでしょう。
反対に、親との関係が苦手な場合は経営が難しいと言われます。
近年では、モンスターペアレンツと呼ばれる対応の困難な親の問題があります。
すべての親が理不尽な態度をするわけではありませんが、色々な保護者がいることを頭に置いておきましょう。
待ち時間の短縮
具合の悪い我が子を一刻も早く診て欲しいのはどの親も同じです。
インターネットでの予約システムや呼び出し機能などを導入し、待ち時間の短縮を図った小児科はクレームが減ったという話も聞きます。
年収アップには、魅力的なポイントをアピールした集患が必須です。
隔離した部屋の設置
小児科は感染力の強い病気が多いため、親は必要以上に気を使っています。
水ぼうそうやおたふくかぜ、風疹などが疑われる場合は、別の部屋で待機する方法を設ける小児科もあります。
動線を工夫し、なるべく他の患者と接しないよう設計することが大切です。
予防接種の枠を設ける
小児科は病気の患者だけでなく、健康な子供が予防接種を受けに来る場所でもあります。
病気の子供がたくさんいる中で、元気な子供が一緒に待つのは親として心配です。
週に数回でも、診療時間以外に予防接種の時間帯を設けることをおすすめします。
院内処方にするかどうか
病気の子供を連れて、診察終了後に別の薬局に行くのは労力が必要です。
親の負担を考慮して、院内処方にしたクリニックもあります。
ただし、患者数が増えて待ち時間が長くなったり、待合室が狭くなったりする難点もあります。
X線撮影装置の導入
最近では、X線撮影装置を導入せずに近隣の施設に依頼しているクリニックも多く存在します。
地域の医療機関との連携という利点も重視できますが、患者側の負担が増えるデメリットがあります。
靴の履き替え
小児科では、床で遊んだり寝転んだりする子供がいるため、スリッパに履き替えるクリニックもあります。
その場合は履き替えるスペースや靴箱、滅菌する機器の導入、スリッパの買い替えが必要になります。
小児科の勤務医と開業医の労働内容の違い
次に、勤務医と開業医の違いを項目別に見てみましょう。
労働時間の違い
平成20年(2008年)に東京保険医協会が調べた「開業医の実態・意識基礎調査」によると、開業医の労働時間は1日に7時間〜9時間が最も多く、次いで9時間〜11時間という数値が出ています。
つまり、週に換算して50時間以上の労働と推測されます。小規模のクリニックでは、従業員の法定労働時間を週に最大44時間に設定できますが、それを上回る時間数であり、楽な仕事ではないと言えます。
しかし、平成18年(2006年)に、国立保健医療科学院が行ったタイムスタディによると、勤務医はそれを上回る労働時間であることがわかります。
20歳代後半の男性勤務医の平均労働時間は週85時間、60歳代では48時間という驚きの数値が出ているのです。
20歳代後半の男性勤務医の平均労働時間は、過労死認定基準である週20時間以上の残業に値する結果です。
休日について
開業医の場合は、自分で休診日を設定できる利点があります。週休1.5日、お盆や正月、GWもしっかり休む診療所もあります。
小児科は7月~9月は比較的患者が少ない時期と言われるため、夏休みを取りやすいというメリットもあるでしょう。
しかし、休診した日は無収入で、患者が少ない日の収入は当然少なめです。一方で、勤務医は休日が比較的少なめです。
ただし、万が一休む場合でも代わりの医師がおり、有給も使えるため年収は安定しています。福利厚生が受けられる点もメリットです。
急患や休日診療の当番
小児科の開業医は、地域内で夜間や急患、休日の当番の受け持ちがあります。
休日診療では、スタッフが少ない中で多数の患者を診るため、特に年末年始などは昼休みが無い状態になります。
さらに、時間外の診療や夜間の電話対応も多々あります。
勤務医も、診療科によっては救急の対応や当直、オンコールで長時間拘束されます。
しかし、当直のない科ではオンオフがはっきりした働き方ができる場合もあります。
学ぶ機会
開業医は、自分1人で経営から診療まで責任を負わなければなりません。
難しい症例でも、経験豊かな先輩が身近にいないため、自分で調べることが必要です。
ある程度のキャリアがないと対応できない心配があります。一方の勤務医は、何かあれば先輩の指導を受けられる可能性があります。
大学病院等に勤めている場合、症例や患者数が多く、たくさんの知識や技術を学べることがメリットです。
しかし、常に病院側の方針や先輩医師の指示に従う必要がある上に、派閥や役職のポジション争いなどに巻き込まれることもあります。さらに、定年になれば退職を強いられます。
その他
開業医は自分のクリニックだけでなく、校医や園医として集団健診、自治体の健診事業や予防接種にも対応しています。
各種委員会や理事会、セミナーなど多方面の集まりもあります。
さらに、経営者としての仕事もあり、スタッフの給料や福利厚生、欠員の際の求人、機器や薬剤の管理、医療関係の営業とのやりとりなど、多くの業務があります。
医療機関にもよりますが、勤務医の場合はこれらの業務は強制されません。
開業医と勤務医の違いを見てきましたが、同じ医師としてお互いに連携を深めるべきだという意見もあります。
地域内の開業医と勤務医が協力し合い、スムーズな医療が展開できるよう、働きかけることが必要と言われています。
具体的には一次医療、一次救急を開業医が担当し、入院などの二次、三次医療を規模が大きい病院が請け負うという体制が理想的と提言する医師が多くいます。
小児科の開業医の割合
平成26年(2014年)に厚生労働省が発表した「医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によると、小児科の医師数は16,758 人で医師総数の5.6%にあたり、ここ最近では少しずつ増加傾向にあります。
このうち、病院に勤務する小児科医は10,108人、診療所勤務の小児科医は6,650人と記載されており、小児科全体の平均年齢は49.8歳と報告されています。
平成24年(2012年)では、全小児科医のうち女性医師が43.8%を占めています。
一方で、少子高齢化の流れの中で小児科を標榜する診療所は減少する方向にあり、平成2年(1990年)には27,747箇所あった診療所が平成23年(2011年)には19,994箇所に減っています。
少し古い資料になりますが、平成20年(2008年)の日本小児科学会雑誌に、小児科全体の中で勤務医が占める比率を示したデータがあります。
- 平成 10年(1998年) 57.3%
- 平成 12年(2000年) 57.6%
- 平成 14年(2002年) 58.2%
- 平成 16年(2004年) 57.2%
- 平成 18年(2006年) 56.0%
小児科の勤務医比率は、一時期増加したものの減少傾向にあり、現在はさらに減っていると推測されます。さらに、開業医の数の推移を見てみましょう。
- 平成 10年(1998年) 5,967 人
- 平成 12年(2000年) 5,998 人
- 平成 14年(2002年) 6,052 人
- 平成 16年(2004年) 6,284 人
- 平成 18年(2006年) 6,472 人
これらの資料から、小児科の医師数が微増する中で、開業医は年々増えていることがわかります。
また、閉鎖に追い込まれる診療所がある一方で、新たに小児科のクリニックが開設されていると考えられます。
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